『極道生徒会 眠れる獅子』 サンプル

五分前に遡ろう―――
 召集された各部長とその会計担当達は会議室に入っ
てきた赤堀先輩と同行者である高橋と僕を見て、ホッ
とする者、ジロリと睨みつける者、笑う者と様々な反
応を示した。

 「皆さま、今日はお集まりいただきましてありがと
うございます」

 小さい声で挨拶した赤堀先輩が着席すると、「会長
のお二人は来ないんですか?」誰かが尋ねた。

 「ええ。我々だけです」高橋が答えると「そうなん
だ」と、どことなく嬉しそうな声で言ったのは野球部
の主将。それを受け、バレーボール部の主将が調子づ
いて仰け反るように座りなおして、悪態をつく。

 「なぁ、休日明けに提出しろと連絡を受けたが、随
分と強引な話じゃねぇか? たかだか部の年間予算の
話だろうが」

 その瞬間だった。
 カチッ……
 ん? なんだろう。今、何かスイッチが入るかのよ
うな音がした……まさか……僕はふと、周囲の空気の
温度が一気に凍てつく寒さになった事に気づく。

 来たっ……来たよ。『眠れる獅子』の目覚めだ。
 「決定した日にちまでに予算案を出せないようなら
ば、減額で一日毎にマイナス五千円になると思ってく
ださい。それでも構いませんか?」

 猛獣どもに、誰が主かを思い知らせようとするかの
ような、上から目線の発言の主は赤堀先輩のもの。強
硬な物言いは先輩に似つかわしくないと思う。だけど、
どの口が語るのかといえば、確かに先輩の口。

 「冗談だろ……」
 呟きを、先輩は聞き逃さなかった。眼鏡の下の冷た
く刺さるような瞳がギロリと向けられる。

 「ぐたぐた言わない! 全部の会計に告ぐ。休日明
けに提出しなさい。これは命令です」

 「ええーっ!」
 会議室でブーイングが巻き起こった。
 「うっ……うちは、休日明けは無理だ」
 「今度、新しい議案が過半数で可決されたら、『提出
 書類の遅延・違反項目は減額』という規則を、貴方の
部には早速適応させていただくわね。バトミントン部の
向井さん」

名前を言われ、ギクリっと体を反応させた部長は慌


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